『過矯正』という言葉はご存知でしょうか。
読んで字の如し、”矯正し過ぎ”のことで、必要以上に視力の矯正をしてしまうことです。
しばしば『過矯正』が問題になるのは、少しでも高い視力を求めようとする視力至上主義が、根強く残っているからといえるでしょう。
■ その視力、本当に必要ですか?
もし私が魔法を使えて、視力を一瞬で回復させますと言ったら
あなたは視力をいくつにして欲しいと言うでしょうか?
おそらく、1.5や2.0と答える方が多いのではないかと思います。
小さい頃から親しんできた視力検査表は、1番小さいランドルト環が2.0、2番目が1.5、3番目が1.2ですよね。小学生のとき、視力が2.0あることを自慢している子はいませんでしたか?視力が高い方が「勝った」みたいな。
テストの点は高ければ高いほどよかったかもしれませんが、視力はそうではないんですね。
高い視力に憧れる気持ちはわかります。しかし、見えれば見えるほどいいと考えるのは早計です。
なぜなら、現代人の生活パターンにおいては近くを見ることの方が圧倒的に多く、近くが見えにくいことによる弊害が大きいからです。
視力1.0とは、5メートル離れた位置から直径が7.5ミリのランドルト環の、1.5ミリの切り欠きが分かることを意味します。
どれだけスゴイ能力か、おわかりでしょうか?
5メートル先から1.5ミリの隙間を認識できる能力は、相当すごいことです。
でも日本では残念ながら、視力1.0未満の方が半数以上です。このすごい能力の持ち主は意外と少ないのが現状です。
必ずしも遠くがよく見える目が、良い目というわけではありません。日常生活では、本を読む、字を書く、パソコンを使う、携帯電話を使うなど、近くを見るシチュエーションの方が圧倒的に多いですよね。
視力が良い人ほど、近くを見るときに水晶体を厚くしなければなりません。そのぶん毛様対筋を酷使することになります。その結果、緊張状態を強いられ、眼精疲労を引き起こしたり、視力低下の原因になります。いいことばかりではありません。
■ レーシックでは失明しない。しかし・・・
レーシック手術を受ける人は年間45万人にも達すると言われています。年々多くの方が受け、やってよかったという声もよく聞きます。
では、レーシックの成功とはなんでしょうか?
視力が1.5になることでしょうか?
視力には遠方視力の他、近方視力、色覚、深視力、動体視力、暗視力があり、それぞれバランスよく機能しています。
そのうちレーシックで引き上げることができるのは遠方視力だけです。
過去のメルマガでも説明しましたが、レーシックのトラブルとしては、ハロ、グレア、不正乱視、ドライアイ、感染症などがあります。角膜の表面の手術なので基本的に失明はありません。
失明しないからといって安心できません。上記のトラブルの他に「過矯正」の問題がクローズアップされています。
週刊文春の記事で「レーシック手術が危ない」というタイトルで過矯正の問題について取り上げられていました。
「過矯正」とは読んで字の如し、矯正し過ぎることです。
過ぎたるは及ばざるが如しということわざもありますが、見え過ぎることで引き起こされる問題があります。
度の強いめがねをかけたときや、バスの中で本を読んだとき、気持ちが悪くなった経験はありませんか?
目の調節能力には限度があるので、遠視状態にある人が近くを見れば、常に目の調節筋に負担をかけることにになります。
目の調節筋と自律神経は結びついているため、この状態が続くと、疲れ目、頭痛、首や肩の凝り、めまい、吐き気、全身倦怠感、うつ症状を引き起こす可能性があるということです。
手術を受ける際に、希望する視力を伝えなければ、1.5以上に矯正される可能性が高いでしょう。特に平均視力などの実績を公表しているところはその傾向にあると思います。
単純に視力は良ければいいというものではありません。生活習慣も職業も違えば求める視力は一人一人違います。同じ2.0の視力でも、満足できる人と苦痛になる人に分かれます。めがねのようにかけたりはずしたりできないレーシックだけに、視力を安易に決定するべきではないのです。
単純に視力が1.5になればハッピーではないのです。
例えば、私が取材した銀座スポーツクリニック(閉院してしまいました)では、1日に2,000ページもの論文に目を通さなければならない大学教授の場合は0.8に、プロゴルファーの場合は2.2に矯正を行ったという事例もありました。
このようにヒアリングをして、生活習慣に合った視力に合わせてくれるクリニックから選ぶことをお勧めします。
値段の安さだけでクリニックを選んではダメです。安いところほど、数をこなさないと採算が合わないため、カウンセリングの時間を取ってもらえないのです。
レーシックで失敗しないために大切なことは、術後の視力を決める際に
きちんと相談に乗ってもらえるクリニックを選ぶことです。
今日はレーシックと過矯正の問題についてお話しました。
「自分はレーシックを受けないから関係ない」という人もいるかもしれませんね。でも実は、レーシックを受けない人にも過矯正の問題はあるのです。
視力回復に過信は禁物。早期発見、早期対処を心がけてください。
近視は進めば進むほど、回復は難しくなります。
何度も言うようですが、ローマは一日にしてならず。継続は力なりです。
諦めずにトレーニングを続け、裸眼生活を実現してください
当たり前のことを当たり前にやる。それが、視力回復の王道です。